【感想・考察】『最果てのともだち』16話~暗闇の底から光を求めて~

『最果てのともだち』16話の感想と考察を紹介します。

作品をおさらいしたり、触れるきっかけになれば幸いです。


基本情報

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タイトル『最果てのともだち』16話
サブタイトルひとりぼっちの幽霊
作者雪宮ありさ(@yukimiya_7sb)
掲載誌まんがタイムきららフォワード2022年9月号
出版社芳文社
発売日2022年7月23日
ISBN4910082710925
サイズB5

『最果てのともだち』16話の内容

『最果てのともだち』16話では、幽霊となったキヨが先生を見守り続けたこと・先生がキヨを独りにさせないと誓う様子・アサヒがキヨ達のいる廃校を訪れる様子が描かれていました。

アサヒ・キヨ・先生の光

光を活かした演出が光る『最果てのともだち』。

16話においても、その特徴が遺憾なく発揮されていたのではないかと解釈しています。
教室の明るい光・懐中電灯の光という目に見えるものだけでなく、目に見えないものを描いていたのが印象的です。

目に見えない光は夢や未来、希望といった形で描かれていたのではないかなと。

アサヒ・キヨ・先生はそれぞれ光を求めているという印象が強いです。

自分が自分であるための光・自分を救ってくれるかもしれない光・自分の進むべき道を照らしだす光とさまざまな光を求めていたようにも。

それぞれが求めていた光を整理すると、このような感じに。

  • アサヒ:キヨ・先生・ユウ・母親・教師という夢・自分を待っているであろう未来の生徒と教室
  • キヨ:自分を愛する者・自分を愛してくれる者・アサヒ
  • 先生:教師の仕事・生徒の待つ教室・ひとりぼっちのキヨ

この辺は、人によって感じ方が違うかもしれませんが…

先生は光を見失うことがなかったらこそ、教師という夢を叶え、生徒を教える機会を得ることができました。(悲劇的な出来事はありましたが…
キヨも自分を心から愛してくれる光を求めていた印象が強いですし、アサヒも言わずもがな。

光を見失うと、暗闇から抜け出せない。

そんな印象を受けます。

光を求めて彷徨っている・光を掴み取るために辛いことに耐え続けるというのを丁寧に描いている部分は『最果てのともだち』における強みのひとつだと感じています。

そして、目の前の光が必ずしも、自分を救ってくれる光ではないことを描く点も。

夜の学校で授業の練習をしていた先生を照らす警備員が持つ懐中電灯の光は優しい光ではなく、先生を極限状態まで追い込む残酷な光でした。
光があると信じた先生の言葉を見ると辛さがですね…
先生の教師を続けたい・生徒のために授業をしたいという気持ちは否定しませんが、夜の学校に忍び込むという行為は決して褒められた行動ではないような。
自分のしていることが本来いけないことだというのが分かっているからこそ、先生は警備員から逃げたわけで。

そんな先生の傍で先生を照らし続けようとしたのがキヨ。
先生が死んだ時のショックは自分が死んだ時と同じくらいあるいはそれ以上だった気がしないでもありません。
大切な人を守れなかった時のショックは計り知れないものです。
警備員から逃げる先生を救おうと手を差し伸べても気付いてくれないというのが辛さを倍増させます…

救えなかったという辛さだけでなく、気づいてくれないというショックも感じていたのでしょう。

キヨが先生を制止するシーンは『最果てのともだち』16話における見どころのひとつ。
救いたいけど、救えなかったという辛さを実感できるシーンに仕上がっています。

逃げた先生の目の前に外へ出る扉が描かれていましたが、先生の目には光が映っていたのかどうかも気になるところ。

ラストにアサヒが何かを決意した表情で廃校を訪れていたのも見どころのひとつに挙げられます。

目的はただひとつ。

キヨに会うためです。

いじめられ、絶望していたアサヒを救ったのは紛れもないキヨ。
アサヒのお母さんやユウ、保健の先生もアサヒを支えていましたが、一番近くで支えていたのは誰かと言えば、キヨでしょう。
「約束」の花言葉を持つシロツメクサの栞を持って。
キヨと一緒にいるという約束を果たすためにここへやって来たという感じを受けます。

何かを決意したアサヒは美しくも見えます。

酷いいじめに遭ったアサヒですが、芯が強い子だなと実感することができるのではないかなと。
キヨを放っておけないといったところでしょう。
キヨは絶望していたものの、夢は掴んでいる。そんな感じがします。

立ち入り禁止の看板がこの世とあの世の境目ではないかと感じた自分がここにいます。
一歩踏み込んだら、もう戻れないんじゃないかという感覚を覚えました。

後、キヨが絶望していた時、先生が泣いていましたが、自分ではキヨを救う光にはなれないと感じていたからではないかなと。
目の前の教え子を救えないという辛さ。
先生にとっては、これ以上に辛いものはないでしょう。
ひょっとしたら、死ぬことよりも辛い事実なのかもしれません。

相変わらずバカな先生だとキヨは言っていましたが、内心は嬉しかったのでしょう。
バカと言われても、救えないと感じていてもキヨの傍を離れない理由はただひとつ。

だって、教え子なのだから。

最後に

『最果てのともだち』16話では、夢が叶うことなんてないと絶望していたキヨに先生が寄り添う様子が描かれていました。
ラストにアサヒが登場していたわけですが、キヨにどんなアプローチをするのか気になるところです。

場合によっては、ユウがプレゼントしたコルクボードに思い出が更新されることも…

とりあえず、早く続きが読みたいです。

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