ヨルのクラゲの前で歌いたいなと言う花音(かの)が威力バツグンだった…
1つのイヤホンで繋がるまひると花音の姿も印象的だったけど、花音のオンステージがやっぱり印象に残る。
1話の時点では、作画も悪くないと思うし、ステージでの演出も見応え十分だった。
何者かなろうと模索するまひると花音の葛藤も丁寧に表現されていたなと。
変身
「何者かになろうとする」「新しい自分に変身」といった変化を望む言葉が『夜のクラゲは泳げない』1話を通して、よく耳にする。
「何者かになろうとする」というのはこのアニメにおけるテーマなのだろう。
まひるや花音などを見る限り、主要キャラクターは過去に大きな挫折を経験している点が共通しているのかなと。自分の絵を評価されなかったこと・アイドルグループのメンバーとの衝突。まひるも花音も暗い影を落としている。
1話の時点であまり触れられなかった竜ヶ崎ノクスことキウイも暗い部屋に閉じこもっているという印象を受けた。キウイがいかに自分の殻を破っていくかも今後の見どころになるのかなと思った。
変身をイメージさせるものが物語の至るところに散りばめられており、なりたい自分・新しい自分というのが強調されている。
- ショーウィンドウに飾られていたハイエンドの服
- インフルエンサー
- 化粧
- 写真加工アプリ
- アイドル
- 眼鏡
- コスプレ衣装
- ハンドルネーム
- SNSのアイコン(アバター)
- コスプレ衣装
- ハロウィン
- 髪を染めた花音
- みー子のポスターを剝がすまひる
こうして見ると、変身やもう1人の自分を感じさせる要素がたくさんある。服やメイク、アクセサリーで自分を着飾り、ハンドルネームやアバターで活動する姿は変身を感じさせるのではないだろうか。
花音がまひるにJELEEのことを嬉しそうに語っているシーンは新しい自分に変身する喜びを表しているような。最も、花音には暗い過去と葛藤があるようですが。JELEEの動画の再生数がイマイチ伸びていないことから、新しい自分を認めてもらえていないというのを実感しているようだ。だからこそ、花音は歩道橋の上で皆を見返すんだと叫ぶわけで。
また、1話において、まひるがなりたい自分に変身する過程が表現されていたのも見どころの1つだ。ショーウィンドウの服の値段に困惑し、店頭に売られている眼鏡をかけてもイマイチパッとしないと悩むまひる。花音に悪魔のコスプレ衣装を取られたシーンはまひるがなりたいものになれていないというのを表していたような。あと一歩が出ない面はコスプレ衣装を購入するシーンだけでなく、みー子のステージにおいても反映されていた。大切な絵や歌を穢され、声を出せなかったまひるの背中を押したのは花音。花音との出会いがまひるの変身を後押しした。
まひるがなりたい自分になろうとしている様子を表しているのはみー子のポスターを剥がすシーンだ。花音の歌に触発され、まひるは一歩踏むだし、みー子のポスターを剥がす。この瞬間、まひるは自分の殻を破った。それも相まって、花音のオンステージはより魅力的に映ったのだと思う。
重要な場面に居合わせているみー子は単なる噛ませ犬ではない。みー子もまたなりたい自分になるために足掻き続けているのだろう。アイドルがイベントする場所は多岐にわたる。多くの方はライブハウスやCDショップのイベントスペース、何かのイベントのステージを頭に浮かべるのではないだろうか。
活動歴は長く、ヒットするために地道に活動を続けているといった印象をみー子から感じ取った。観客の少なさから察するに、みー子は売れていないようだ。自分の曲で勝負していなかったし。
コミカライズ版でみー子が花音のオンステージがバズっても動画を消さないと言っていたことからも売れるためには手段は選ばないといった印象を受ける。みー子がそれだけ売れるために必死だということ。その選択がみー子に大きな影響を与えることになりそうですが。
なりたい自分になるために必要なのは煌びやかな服やメイクなどではなく、一歩踏み出すための勇気といったところだろう。ハロウィンの渋谷には、コスプレ衣装を着こなす大勢の人達で溢れていた。ただ、姿を変えるだけでは、普通や量産型から抜け出せない。
「何者かになろうとする」「新しい自分に変身」の対義語があるとするなら、それは「普通」「量産型」が挙げられる。まひるは普通や量産型と言われると、ダメージを負っていたのが印象的。それが「普通」「量産型」を「何者かになろうとする」「新しい自分に変身」の対義語にした理由だ。まひるがイメージするOL姿のまひるは「普通」「量産型」が表現されている。
最も、道路の溝に足を引っ掛けるまひるを見ていると、前途多難の一言が頭に浮かぶ。まひると花音は放っておけないといった感じがする。靴が片方脱げたまひるはさながら、花音のシンデレラ。思えば、シンデレラも舞踏会の夜に華麗に変身していましたね。(ブラックな要素に目はつぶるけど…
クラゲ
アニメのタイトルに用いられているクラゲ。クラゲは『夜のクラゲは泳げない』におけるアイコニックな存在だ。
『夜のクラゲは泳げない』というタイトルから、まひるが誰かの存在が無いと輝けない・活躍できないといったものを察した。まひるが「海月ヨル」というもう1人の自分として活躍するためには、表現する場所やイラストを求めている誰かの存在が無ければ輝くことができない。
クラゲは外から光を貯めることで自分でも輝くことができるというのは誰かの期待や応援を受けることでまひるのイラストが輝くと捉えることができるのではないか。ラストに登場した七色に輝くクラゲは幻想的だった。クラゲのような存在であるまひるや花音が光を貯めて輝くのは特別な何者であるかを証明するため。誰かに見つけて欲しいと願うためだと捉えている。
誰かの期待や応援を受けて輝くことができるのはイラストレーターに限らず、アイドルやシンガーソングライター、Vtuberなどにおいても同様のことが言えると思うけど。
MIYASHITA PARK前ガードしたにあるクラゲの壁画はまひるのメタファー。落書きやみー子のポスターがまひるの心を傷つける。自分の創作物が評価されない辛さをよりダイレクトに表現されていた。自分の名前を塗り潰すまひるは見ていて、辛過ぎる…
コミカライズ版だと、まひるが小学校時代に描いたクラゲの壁画についてどう思っているかをより詳細に描かれている。アニメ版とコミカライズ版を一緒に楽しむことでより解像度が高まるといったところか。コミカライズ版だと、絵は将来役に立たないとまひるに言った佳歩も印象的。この心無い一言もまひるの心をダイレクトに傷つけていたと思う。
最後に
今回は『夜のクラゲは泳げない』1話を語る上で変身とクラゲについて少しばかり深掘りをした。この感想がアニメをより楽しむための手助けになれば幸い。2話以降も継続して視聴しようかなと思う。
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