孤立した心『ぜんぶ壊して地獄で愛して』18話の感想

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心が完全に孤立していたのが分かった。工藤に自身の考え方を否定され、直井に相手もされていなかった。何より、来未が心を完全に拒否していた。


直井と心には、大きな差があることを実感できたと思う。


心は一方的なのに対し、直井は来未を何度も救っている。差ができて当然なのだ。事実、来未は真美子からの抑圧から解放されている。真美子の幻影に悩まれていた時もあったけど。


直井がいなかったら、来未は心が行っていたことと同様の行動を行っていたのではないだろうか。1話の時点で正常な判断ができないくらい精神を疲弊していた。写真立てを壊す・机に恨み節を彫る・直井を殴るといった行為で来未の抑圧された感情を解き放ち、結果的に来未にとって、救いの道に導いていた。


写真立てを壊したのは直井だけど、来未も共犯だ。一線を越えた行為を共に成し遂げたことにより、来未と直井は強い繋がりを得た。


伊佐沼との騒動の時に来未に対して手を差し伸べたのは誰か。直井だ。恋人とのたまう心は来未を拒否していた。


来未の家に入る時、インターホンを鳴らしたのは誰か。直井だ。


来未が困っている時、いつも直井は来未に対して適切な方法で救っている。


堀江が進路調査票について来未に丸投げした時、直井は来未が嫌々やっていることを見抜いていたのではないだろうか。


生徒達の希望する進路というプライバシーを一生徒に管理させる堀江は教師として適格なのか。事なかれ主義を持ち、伊佐沼と一線を越えた関係を持とうする堀江は教師の器ではない。


心は直井に対して自分は来未とずっと一緒にいたと言っていたけど、ずっと一緒にいただけとも捉えることができるのてはないだろうか。描き下ろし漫画において、心はアイドルになった来未に過度な期待を寄せるアイドルオタクとして描かれていた。


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ずっと一緒にいるばかりか理想だけを押しつける心。来未にとっては厄介なファンだ。


また、2巻の描き下ろし漫画において、心は来未を理想のヒロインを続けさせようとしていた。


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来未は悪い子。1話のサブタイトルは吉沢来未とは、一体どのような人間なのかをストレートに表現している。2話のサブタイトルでは、来未の状態・状況を表していた。


来未は皆から嫌われたと心が言っていたけど、来未は元から嫌われている。そのことは伊佐沼を見れば、分かること。1巻の描き下ろし漫画でも来未が嫌われていることが強調されている。


優等生であっても孤立することは直井の過去を見れば分かる。工藤を咎め、父親の暴力から母親と妹を守った直井はひとりぼっちに。しかも、直井の心と体に大きな傷痕を残して…


また、良心の呵責から優等生になろうとした東も孤立することに。人を裏切るということは一体どういうことなのかを東からも実感できる。

心が直井を襲わせるきっかけになったのは工藤だ。来未の拒否は最後の引き金と言えば良いか。最も、心に嘆く権利はない。心も来未に対して同じことをしたのだから。


工藤は来未・直井・心のやり取りを見て、3人の関係性を察したのだろう。小学校時代の工藤はおそらく優等生の一面を持っていたのではないかと私は考えている。


工藤が1人の同級生をいじめていた時、他の同級生達は止めようともしなかった。直井を除いては。支配的な立場を取れるくらい、工藤は教室の中で力を持っていたに違いない。


来未が直井を頼っていること・直井が来未に特別な感情を抱いていること・心が来未を好きなこと・心が直井を嫌っていることを工藤は察した。


そして、下田心は工藤と同じタイプの人間であることを。


インターホンを鳴らさずに来未の家に入ってきたのが良い証拠だ。


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工藤は直井に恋愛感情を抱かれることはないのを分かっているのだろう。握手券を対価にアイドルと握手をするファンの如く、お金を対価に被虐の快楽を求める。


工藤は直井を襲った心を来未に止めさせ、来未の本心を引き出そうとしていたのかもしれない。それにより、心はさらなる絶望に叩き落される。


心に比べると、工藤は直井と上手く接している。工藤から恋愛感情を感じなかった。直井が与える痛みに恋をしていると言えば良いのかな。


直井を痛烈に批判していたにも関わらず、来未をさらに辛い状況に追い込んだのは心というのは何という皮肉。


心の両親は来未と心を引き離すでしょう。心がさらに崩壊させないために。いや、心はもうすでに手遅れかもしれませんが。


心が直井に言っていたことを工藤が否定していたのは印象的だった。工藤は直井に痛みを与えられるのが大好きだ。また、人によっては自ら進んで孤独を選ぶ場合もある。孤立と孤独は別だけど。


工藤は心の立場に立っているし、来未に近い立場にも立っていた。そして、直井ともある程度の付き合いがある。全体の状況を俯瞰して見れたのは工藤だったのかもしれない。工藤はその先の展開も読んでいたと思う。だからこそ、工藤は心を止めようとしなかった。心が自ら破滅の道に転がり込んでいくのを楽しんでいる。


真美子が戻って来る可能性は益々ひくくなりそう。心が大きなトラブルを起こした場所でずっと過ごせるとは思えない。ましてや、来未が自身の想いを抑えようとしていたという事実刻んだリビングで真美子はくつろげるだろうか。来未は人付き合いのできない人間という烙印を押し、来未と離れて暮らし続けるのでしょう。


心の暴走を助長させた明音は来未のことを見えていたはずなのに…どうして…来未と心を明音が引き離していたら、違った未来が見えていたかもしれない。覆水盆に返らずとはこのことだ。


心の孤立・来未の拒否・来未を救いに来た直井・全体を俯瞰して見ていた工藤が描かれた話に仕上がっていた。


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