『この恋を星には願わない』4巻の基本情報
3巻までのあらすじ
暑い夏に行われた映画研究部の合宿。
そこで繰り広げられたのは修羅場とたった1人の下心。
確実に変化していく冬葵・瑛莉・京の関係性。
合宿での出来事を通して、瑛莉は冬葵に対する想いを膨らませていく。
基本情報
1~3巻のISBN
『この恋を星には願わない』4巻の内容・見どころ
話数 | 内容 | 見どころ |
---|---|---|
16話 | 冬葵達の夏祭り。 | ラストに描かれた修羅場。 |
17話 | 冬葵が京と伊野を糾弾する話。 | 冬葵が伊野に対して怒りを露わにするシーン。 ラストにおける瑛莉の予想外の行動。 |
18話 | 瑛莉が冬葵に恋愛とは別の意味で好きだと告白する話。 | 瑛莉の告白を聞いた冬葵の反応。 |
19話 | 冬葵が瑛莉にどれだけ苦しんできたか暴露する話。 | 瑛莉に自身の想いを思い切りぶつける冬葵。 |
番外編 | 妃咲の過去を掘り下げた話。 | 妃咲のバックボーンを丁寧に描いている点。 |
20話 | 後悔に暮れる瑛莉が冬葵の想いに正面から向き合う決意をする話。 | ラストにおける瑛莉のとある行動。 |
『この恋を星には願わない』4巻の感想
ギッ…ギャアァァァァ!!!!!
冬葵達の修羅場で頭の中をグシャグシャにされた…
こっこれが感情のジェットコースターというやつか。
1冊の中にどれだけ修羅場を入れてくるの???
紫のあ先生。もうこれ以上、私を困らせるのはやめてください!!!
話の密度がとにかく濃い。
冬葵と瑛莉はもちろん、2人の脇を固めるキャラクター達の存在感もしっかり出ていた。
1話、1話の密度が濃く、息継ぐ暇を与えない。
「この後、一体どうなるの?」「早く続きを読みたい!」といった欲を刺激する。
百合ナビの第6回百合漫画総選挙で多くの百合漫画をごぼう抜きし、3位にランクインするのも納得。
『恋ねが』4巻の内容だけ見ても、それだけ説得力のある百合漫画だと思う。
感情表現・言葉の選び方・演出・物語の構成がとにかく秀逸だ。
満足感の高い百合漫画なので、本当に1人でも多くの方に読んで欲しい。
道化師
16話の扉絵は、冬葵達の関係性が色濃く反映されていたと思う。
ひび割れた鏡はおそらく今までの関係性が崩壊したことを表しているのだと私は解釈した。
冬葵達が道化師の仮面を持っていたのも印象的。
皆、仮面で本心を隠し、生きていることを感じさせる。
少なくとも、冬葵は瑛莉達に本音を隠して生きていた。
冬葵が口元に仮面を当てているのは本音を絶対に漏らさない・誰にも明かしたくないといった意思の表れではないだろうか。
どのキャラクターも仮面の向こう側には剥き出しの感情・醜い一面を垣間見ることができると思う。
妃咲に想いを吐露することにより、すり減っていく精神を安定させていると。
冬葵達を彩るように彼岸花が描かれていた。
彼岸花はヒガンバナ科の植物だ。毒があることでも知られている。『リコリス・リコイル』でも話題になった花でもある。
ネリネ・アガパンサス・ネギ・ニンニクなどもヒガンバナ科の植物。ちなみに、生物の分類は変わる場合もあるので、誰かに生物に関する雑学を披露する時・ブログなどで記事を後悔する際は注意が必要だ。
曼殊沙華とも呼ばれることも。サンスクリット語で「天界の花」という意味がある。
彼岸花の花言葉は以下の通り。
冬葵は瑛莉に対し強い想いを抱いてたのに加え、瑛莉もまた冬葵に対して強い想いを抱いていた。愛憎入り混じるその想いは情熱的と言っても過言ではない。
瑛莉と京が付き合ったこと・瑛莉が冬葵のことを全く理解していなかったことに対し、冬葵はあきらめの想いに押しつぶされそうになったのだと思う。
冬葵達の関係性が崩壊するまでの悲しい思い出が短い時間の間に起きていたのは確か。
『恋ねが』に描かれている悲しい思い出の数々は見ていて、心を締め付けられる。
「辛い」という2文字に支配されつつも、「続きが気になる!」という想いだけでページをめくる手を動かし続ける。
伊野という名の悪女
3巻の時に憔悴しきった京の懐に潜り込んだ伊野。
16話・17話では、伊野が大活躍していた。
合宿の時、伊野が京にアプローチしたエピソードがとにかく生々しい…
お昼時に放送されているドラマの登場人物達も真っ青になるんじゃないかと言いたくなるわ。
まともな判断ができない京の弱みにつけ込み、おいしい思いをする伊野は中々の悪女だ。
伊野の話を聞くと、京がどれだけ弱い人間なのかがよく分かる。強い人間なんて、中々いないですが。多くの人間は精神的な脆さがあると思う。
後、冬葵の言う通り。伊野は本当に気持ち悪い。悪質極まりないわ。破綻しているとはいえ、完全に別れていない状態で一緒に寝ませんかと提案するとかクソじゃん。
瑛莉が京のことを本気で好きではないからと言って、浮気して良いことにはならんだろ!!
その行為がどれだけ冬葵と瑛莉を傷つける!!!
冗談じゃないよ!!
いろいろ言ったけど、伊野の言葉に瑛莉が反論なんてできるわけないんだよなぁ…中途半端な気持ちで京と付き合い、いろいろな人を只々傷つけただけだし…
中途半端な気持ちで誰かと付き合うのは本当に良くない。同じ方向を向いていないから、瑛莉と京はアンハッピーな結果に。冬葵も傷つけ、伊野に過ちを犯させた。
冬葵の激怒
冬葵の絶望・怒りと言えば良いのか。『恋ねが』4巻における冬葵の感情表現がマジでヤバい…
冬葵が伊野を圧倒するシーンで変な声が出た…
目に光が宿ってなかったし。想いの大きさが違うんだよ!って言っているような。
冬葵も京に対しても中々残酷なことを言っていたと思う。京は瑛莉に比べたら大事ではないと遠回しに言っているようなものだ。冬葵の見る世界は瑛莉中心に回っているのがよく分かった。
正直、冬葵の言葉がグサグサ刺さるんですよ。伊野、半泣き状態になっているんじゃ…
瑛莉以外は眼中にないと言っているも同然だけど、京は1ミリも反論できない。なぜなら、京は結果的に瑛莉を傷つけているのだから。憔悴しきっていたとはいえ、合宿での過ちは冬葵と瑛莉に対する裏切り行為だ。
伊野からしたら「何言っているんだ?」という感じなんだろうけど、冬葵の立場から見れば冬葵の言葉1つ1つがごもっともとしか言いようがないわ。私でも伊野に対して、「邪魔!」と言ってしまいそうになる。伊野の口から語られる悲劇のヒロイン話なんてこれっぽっちも興味ない。
最も、伊野がいなかったら、物語の密度が大分変わっている可能性が高かったと思うけど。
それ以上にヤバかったのはひと悶着あった後の冬葵と瑛莉のやり取り。正直、『恋ねが』4巻における最大の見せ場は瑛莉が冬葵に対し、恋愛とは違う意味で冬葵のことが好きだと伝えた後だと私は解釈している。
瑛莉が冬葵に自分の想いを伝えるシーンを読んでいて、「どうしてそうなる?」「なんでそんなことを言うんだ?」といった想いが溢れ出した。冬葵を地獄という名の谷底に突き落とすのに十分過ぎる。
冬葵が瑛莉に対して行ったことは弾劾じゃ???
冬葵の審問に追い詰められた瑛莉の表情が完全に固まっていた。思わず息を飲んでしまった…
こんなシーンをやりますか?紫のあ先生??って言いたくなるわ。
人間の生々しい感情をこうも見事に描きますかと。冬葵が瑛莉を追い詰める姿に見入ってしまう。可愛さ余って憎さ百倍ってこういうことかと感じた。
伊野に怒りをぶちまけるシーンは冬葵のジャブ同然。16話・17話における修羅場が可愛く見える。
瑛莉の絶望した時の表情。ヤバないですか???
心臓が縮こまりそうになるわ!!
恋人同士だから悪いことしてないという冬葵の言葉は破壊力がある。逆に相手に罪悪感を抱かせる。もっと言えば、人のこと何も言えないことをしている事実が冬葵の言葉の破壊力をさらに倍増させていると思う。
正直、冬葵に対して「どの立場で言っているんだ?」と言いたくなる面もある。妃咲に甘えていたし。
冬葵の身勝手極まりない言動の数々が逆に冬葵の魅力をさらに高めているような気がするんだ。
感情を露わにした時の冬葵は本当に輝いている。
ぬいぐるみ
1巻でも登場したぬいぐるみが4巻でも登場したのも印象的。瑛莉の部屋にあるぬいぐるみは状態が良いのに対し、冬葵が持っていたぬいぐるみはボロボロだった。
本当は「お揃いだね!」といった感じで瑛莉にプレゼントしたかったんだろうなぁ…
オペラによってボロボロになったぬいぐるみが痛々しい…
ボロボロになったぬいぐるみを見た瑛莉は冬葵が一体どんな気持ちを抱いていたかを察したからこそ、涙したわけで。
瑛莉との思い出になるはずだったものをオペラのおもちゃにするくらいに冬葵は瑛莉に対して負の感情を抱いていたんだなぁと思うと。ボロボロになったぬいぐるみは瑛莉のメタファーなのかなと感じなくもない。
冬葵は精神的にボロボロになるくらいまで瑛莉を傷つけていたし。
オペラがわざわざ瑛莉にボロボロになったぬいぐるみを渡したのは冬葵の気持ちを知って欲しかったからではないかなと私は解釈している。自分の飼い主はそのくらい心がボロボロになっていた・そのくらい瑛莉が憎くて仕方なかったんだと。
小物1つで中々ヘビーな描写を描くセンスも脱帽だわ。パーフェクトにやられましたね。
最後に
『恋ねが』4巻。密度の濃い話が凝縮されていて、読み応え抜群だった…
歯ごたえのある百合漫画を読みたいと感じている方はぜひぜひ読んで欲しい。1話1話が緻密で「続きを読みたい」という気持ちが刺激される。
人間の感情をここまで濃密に描くのかと言いたくなる。
5巻以降の展開も目が離せない。
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