『今日はカノジョがいないから』6巻の特典とFebriに掲載されていた岩見先生のインタビュー記事について思うことをまとめることに。
『今日はカノジョがいないから』6巻の特典から感じるSM要素
『今日はカノジョがいないから』6巻が発売されてから数日が経つ。
こうして並べてみたけど、SM要素がつよっつよだな!!
メロンブックスの有償特典をはじめ、アニメイトとまんが王のイラストカードはそれをダイレクトに感じることができる。
体育倉庫で繰り広げられたゆにと風羽子の秘密の出来事を思い出させる。熱気あふれるグラウンドの近くでバレたら全てが終わるかもしれないシチュエーションがさらなる興奮を誘う。
Febriに掲載されていた岩見先生のインタビュー記事において、岩見先生が女子同士で行う拷問・SMについて語っていたのが印象に残る。岩見先生のインタビュー記事は『今日はカノジョがいないから』を読み進めていく上でとても参考になる。
風羽子はただ単にゆにを苦しめるだけの女の子ではない。おいたをしたゆにに罰を与えつつも、ご褒美をしっかりと与えている。おしおきもゆににとって見れば、ご褒美なのかもしれないが…
それが分かるのがメロンブックスで購入した際に付いてきたリーフレット・まんが王の有償特典・一迅社オンラインで購入した際に付いてきた色紙。
七瀬がゆにが望んでいない学ランを着こなしているのに対し、風羽子はゆにの好きなチアガール姿に。こうして見ると、風羽子はゆにの望むものをしっかりと与えているように見える。リーフレットを開いてみると、ゆに・風羽子・七瀬の3ショットが。
まんが王の有償特典であるアクリルスタンドは15話におけるゆにと風羽子の浮気シーンを彷彿させる。途方に暮れるゆにを上から見下ろしつつ、ご褒美にさくらんぼを与えていた。浮気は悪いことと言って、ゆにを咎めていたのも印象的だ。望みを叶えつつ、罰を与えるその瞬間はまさしくSM。まさしく拷問。6巻とインタビュー記事を読み終えてから改めて振り返ってみると、ブルッと鳥肌立つ…
一迅社オンラインで購入した際に付いてきた色紙は、風羽子がゆにの望みを常に叶え続けてきたことがよく分かるものになっている。優しいはずの七瀬なのに、ゆにの望むものがまるで分かっていないという。ゆに自身、弱いからこそ優しい風羽子に流されてしまうのだろう。まさしくクズ。
風羽子も七瀬もクズなのは間違いないですが。ブログでクズとか言ったりして大丈夫なのかと思ったりしたけど、岩見先生がハッシュタグでクズ百合と書いているから言っても大丈夫かという結論に。クズ百合=『今日はカノジョがいないから』という図式を連想させる投稿はなるほどなるほどと感じた。たしかに理にかなっている。クズ百合といえば?と言う問いかけにパッと出てきやすい。
クズはクズでもクズの性質が違う。身勝手で耳障りの良い方向に流されてしまうゆに・愛する人を自分だけのものにするために身も心も浸食していく風羽子・恋人だったら分かってくれるだろうという精神で今までゆにと接し続けてきた七瀬。みんな違って、みんなクズ。そんなクズたちの浮気と修羅場を私たちは岩見先生に見せられている。
浮気現場を魅力的に描くことにより、浮気現場の目撃者である読者の興味を引き、一体どうなるんだという想いを膨らませる。清純・甘々・キラッキラしたシチュエーションといったものも読者の興味を引くものだけど、悪いことである浮気をし続けるゆに達に待ち受ける結末は一体何なんだという好奇心に逆らえなくなってしまう。倫理や常識といったものが好奇心を刺激し、浮気現場をずっと見ていたいという気持ちに駆られてしまうのかもしれない。
浮気現場の目撃者という言葉も言い得て妙だな。たしかにゆに達の浮気現場を目撃している。ただ見ているだけしかできないからこそ、「この関係性は本当に大丈夫なのか?」「七瀬がすべてを知った時が怖い」といった感情が湧き出てくる。シチュエーション・キャラクターの葛藤・セリフ選びが上手くかみ合っていると思う。
葛藤・罪悪感の重みが変わることにより、ゆにに対して感情移入しやすくなっていたような。「本当はこうして欲しいのにしてくれない」「本当はうれしいはずなのに、うれしくない」といった感情が。ゆにの持つクズな一面は全く同じではなくとも、誰もが持っている一面に思えてしまう。人間は弱い生き物だから。
ゲーマーズ特典の描き下ろしブロマイドも誰が目撃しているか分からない場所で浮気しているゆにと風羽子が描かれている。七瀬に目撃されるかもしれないのに浮気するゆにと風羽子は悪い子だなという想いを増大させる。岩見先生はシチュエーション選びが巧み。
百合でSMと聞いて、『百合SMでふたりの気持ちはつながりますか?』辺りを思い浮かべる方が一定数いたのかなと感じなくも。
愛されるキャラクターデザイン
クズはクズでもベクトルの違うクズであることにより、ゆに達のキャラクター性がしっかりと際立っている。Febriに掲載されていた岩見先生のインタビュー記事においても、キャラクターを描くことの大切さに触れられていた。
百合に限った話ではないけど、漫画・アニメ・ラノベ・ゲームなどに触れる・触れないの決め手の1つがキャラクターだ。少なくとも愛されるキャラクターを愛したいという気持ちが強い。逆に言うと、愛される要素が何1つないと厳しいなと感じることが。
岩見先生がキャラクターを描くことを大切にしていることは『今日はカノジョがいないから』5巻の特典から感じることができるのではないだろうか。
『今日はカノジョがいないから』5巻の購入特典であるリーフレット・描き下ろしペーパーには、ゆに・風羽子・七瀬のプロフィールが描かれている。
プロフィールからゆに達の趣向を把握できるだけではなく、バックボーンを掘り下げることも。プロフィールは作品を深く楽しむためのフレーバーテキストといったところか。カードゲームとかに造詣のある方だと、聞き馴染みのある単語だと思うけど。その名の通り、作品の雰囲気を楽しむためのテキスト。
『ラブライブ!』シリーズのようにキャラクターの魅力が作品の面白さにより関わってくる作品だとキャラクターの個性がより重視されそう。どの物語においても、キャラクターの魅力は大事だけど。
充実したプロフィールを見ると、ゆに達が大切に描かれているのがよく分かる。ゆに達のSNSアカウントのアイコンとかからも個性を垣間見ることができるし。
百合姫つながりだと、『ささやくように恋を唄う』の作者である竹嶋えく先生のキャラクターデザインもすごいなと感じた。『ささ恋』にしろ、『わたなれ』にしろ華やか。
キャラクターデザインは物語を手に取る動機づけになるとさまざまな事例を見ると、実感する。扉絵とかも読者の興味を引けるかどうかの生命線。開けたくなるドアかどうか・開けたくなる宝箱かどうかをキャラクターデザインと扉絵が決定づけると思う。
4巻と5巻の描き下ろしで風羽子の愛される要素が際立っていたような。後、5巻のあとがきにおいて、七瀬と雪の家庭環境がゆにと風羽子の家庭環境と大きく異なることが言及されていた。いろいろな部分を細かく見ると、ゆに達の個性をより明確に感じることができる。
キャラクターを描く大切さに触れた岩見先生のインタビュー記事はとても参考になるので、『今日はカノジョがいないから』を楽しむ際は一読して欲しい。
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