『初凪ヒメリウム』1話の基本情報・内容
タイトル | 『初凪ヒメリウム』1話 |
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作者 | 鹿冬カト(@katokato_22) |
掲載誌 | まんがタイムきらら2025年7月号 |
出版社 | 芳文社 |
発売日 | 2025年6月9日 |
ISBN | 4910083450752 |
サイズ | B5 |
『初凪ヒメリウム』1話の感想
この作品、好きな人はとことん好きってタイプだと思う。扉絵に描かれていた陽姫のアップを見て、興味を持った。
『初凪ヒメリウム』の魅力は一体何かと聞かれたら、以下の4つを挙げる。
- アクアリウムの中を感じさせる幻想的な描写
- 陽姫の豊富なリアクション
- 陽姫の祖母が残したアクアリウムに関する描写
- アクアリウムに関する造詣を深められるところ
アクアリウムという題材を上手く活かしている。形見のアクアリウムを陽姫のメタファーとして表現している点に加え、アクアリウムの中を感じさせる描写で陽姫の世界が広がっていることを感じさせる描写がそう感じた理由。
小さなアクアリウムの中に密度の濃い世界を創造していくのだろうかという期待を抱かせる。メダカの居場所を作るというよりも、陽姫の居場所を作る物語のような。形見のアクアリウムを自分みたいだと言っていたし。
冒頭における陽姫がminatoに初めて来店したシーンに加え、湊本さんがアクアリウムの世界に陽姫を歓迎するシーン・ラストにおける陽姫が家路に向かうシーンも印象的。新しい世界の扉が開いているような感覚を覚える。
水を活かした描写といえば、コミック百合姫で連載されていた『君と綴るうたかた』とかが好き。
繊細な心理描写と隙のない物語の展開に加え、水を活かした演出が物語に彩りを与える。
ワカメになりきった陽姫が個人的に可愛いなと。
湊本さんがアクアリウムの自由度の高さを陽姫に言っていたけど、完全に自由化といったらそうでもないよなぁとか思ったりした。昨今の外来種問題の話が、そう感じさせたのかもしれん。水草だと、オオフサモとかウォーターレタスとかが規制されている。魚においても規制されているものが。アクアリウムという趣味は、知識・お金・責任が必要ではないだろうか。
レギュラー連載が決定した場合、固い話はそこまで描かないのかなと思ったりもした。
陽姫を見ていると、コミュニケーションや自分の意思を表出するのが苦手な女の子が主人公の作品が増えたなぁと。
話が進むにつれ、成長したけど『星屑テレパス』とか。
『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』の燈とか。
後はコミック百合姫で連載されている『キミが吠えるための歌を、』の晴とか。
挫折が最初にあると、成長や変化などを感じやすいなぁと感じることが多い。どの作品も違った個性がある。演出とか話の展開も異なるし。
『初凪ヒメリウム』はありかなしかで言ったら、あり派。アクアリウムという題材を活かした描写が良いなぁと思ったし、陽姫のリアクションも見ていて、可愛いなと感じたし。
タイトルの考察
タイトルに用いられている初凪という単語。初凪の意味は、静まり返った元旦の海だ。ヒメリウムは陽姫のアクアリウムを意味しているのだろう。
穏やかで優しい雰囲気を醸し出す陽姫のアクアリムといったところかな。タイトルのロゴに用いられている色は、青・ピンク・黄緑。青から黄緑の境界があいまいな感じを受ける部分もあった。
青はアクアリウムの水・ピンクはヒメダカ・黄緑は水草を表現しているのかな。ヒメダカと聞いて、オレンジをイメージする方も多いかもしれないけど、ピンク色のメダカも存在する。
『初凪ヒメリウム』1話の演出
とある記事を目にしたけど、確かにきららの4コマって1コマ1コマを読むのに時間がかかる。『初凪ヒメリウム』に限った話ではない。キャラクターの表情・セリフ・枠・コマの配置とか、見る部分が多い。1話全体の変化・4コマ内における変化を追っていくことになるし。
1話冒頭で陽姫がminatoの扉を開けた後、陽姫の全身を映すコマを配置することにより、世界が広がっているような印象を受ける。前述でも触れたけど。
回想シーンは枠を変えて、分かりやすく伝えている。この辺りは他の作品でも目にする。
見せ場・展開が大きく変わる時は、2コマ使っているなぁと。陽姫がヒメダカを見るシーンに2コマ使った後、湊本さんが登場するシーンに2コマ使っている。連続させることにより、話が大きく動いているというのを実感できる。
コマをぶち抜く描写といえば、湊本さんがアクアリウムの楽しみ方は無限大と紹介するシーンも頭に浮かぶ。アクアリウムが飛びしているような感じが。後、湊本さんが手を広げる姿を見て、すしざんまいを…
アクアリウムを1コマにしているのも印象的。ここは『初凪ヒメリウム』の独自性を感じさせる部分ではないだろうか。
陽姫がアクアリウムに貼りつくように見るシーンも、トーンでアクアリウムのガラスを表現していた。トーンひとつで物の質感をどのように表現するかも大事なのかなと。
吹き出し・描き文字でキャラクターの表情・状態を伝えている。湊本さんの場合、点々の吹き出し・描き文字で陽姫に優しく寄り添う感じが表現されているような。
引き出しが透明だと、ここが見どころ・物語が大きく変化するのかなといった印象を受ける。
湊本さんを前にした陽姫がしどろもどろになっている姿も描き文字でより印象的なものになっていたと思う。
文字のフォント・サイズでキャラクターの状態を掴むことができる。特に、陽姫が湊本さんに挨拶するシーンとか。
背景をあえて描かないシーンがあると、陽姫と湊本さんの表情・セリフに集中しやすい。
後は、海草役を演じる陽姫を序盤に描くことでインパクトを残していたような。どんな女の子なんだ!?といった興味を抱かせる。
パッと思いつく限り挙げたけど、1コマ1コマにいろいろなノウハウが詰まっているんだと思う。そう考えると、漫画家さんはすごいなと実感する。
最後に
『初凪ヒメリウム』はアクアリウムを活かした演出が光る一作。個人的に、海草役をしていた陽姫がかわいくてだな。
生き物関係の話題について調べることとかもあったから、どこまで切り込んでいくのか気になる。
アクアリウムを1コマにするところとかも良いなと思ったので、2話以降も追っていくことに。
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