アンタレスのアニメと漫画の解剖録

『正しく叱って、優しく縛って』の感想を紹介することに。

『正しく叱って、優しく縛って』の基本情報・内容

『正しく叱って、優しく縛って』の感想

タイトルを見た時点で気になっていたけど、すべてを知った時に背骨がゾクゾクッとした…

才色兼備な蘭が撫子によって、表情も心も歪ませていく姿はとってもキュート。すべて、撫子の計算だということを知らないのも相まって、蘭の可愛さが数段増していたと思う。

本当は悪くないのに、撫子によって運命を狂わされた蘭。どうして、こんなことに…蘭が綺麗で可愛いから。それが蘭の罪であり、悪いところだ。撫子の心を盗んだ蘭は悪い子。

蘭を手に入れるための手段の選ばなさは、寒気がしたよ…

蘭が完全に撫子の手に堕ちた瞬間はとても美しく、可愛かった。蘭が完全に堕ちるシーンは推したい！！

才色兼備な蘭が撫子がいなくなってしまうんじゃないかと不安になるところは、本当に可愛すぎるんですよ。縄化粧の痕が蘭をより可愛くさせる。

『正しく叱って、優しく縛って』の考察

『正しく叱って、優しく縛って』は、学園祭の準備で大きなミスを犯した蘭を撫子が叱る話じゃない。半分正解だけど、半分不正解だと思う。

『正しく叱って、優しく縛って』は、蘭に対して純粋な愛情を抱く撫子が蘭を自分のものにするための話だ。蘭を絶望のどん底に陥れ、撫子しか頼れない状況を作り出し、一気に畳みかける。

フラワースタンドの準備をしていた黒咲百合のいじめを仕向けたのは、他ならぬ撫子。撫子のスマートフォンに映し出されていたメッセージのやり取りから察することができる。

都合の悪い人間を転校に追い込み、証拠を隠滅する。撫子の魔性っぷりに脱帽する。

フラワースタンドの申請書類を出し忘れるという偶然がすべてを変えた。

抗えば、撫子にすべてを告白され、蘭は破滅する。生殺与奪の権を他人に握らせるとは、まさにこの事。

自分だけが知っている秘密を独り占めしたい気持ち。分からなくもない。

『正しく叱って、優しく縛って』はキャラクターの名前がとても印象的だ。調月蘭・花染撫子・黒咲百合。どのキャラクターも花の名前が使われている。

主人公の調月蘭。撫子に調教される月の女神・蘭。ラン科の植物は多岐にわたる。代表的な花として、胡蝶蘭が挙げられる。蝶が舞っているような姿からその名が付けられた胡蝶蘭。花言葉は「華やかさ」「清純」「幸福が飛んでくる」だ。重要な書類を無くしたことにより、不幸と幸福が同時に飛んできたといったところか。

『私の推しは悪役令嬢。』の特典に胡蝶蘭が描かれていた。

もう一人の主人公である花染撫子。調月蘭という名の花を自分の色に染め上げる撫子。撫子が蘭を自分好みの女の子に調教していく様子は、ゾクッとする。撫子はナデシコ科ナデシコ属の植物だ。数多くの品種が存在する。花言葉は「純愛」「貞節」「大胆」「純粋で燃えるような愛」。蘭に対し、純粋な想いをぶつけていた。

ナデシコ科に属する植物は他にもいろいろある。例えば、カスミソウ。カスミソウはナデシコ科カスミソウ属の植物だ。花言葉は「無邪気」「清らかな心」。純粋で無邪気な気持ちで蘭を可愛がっていた。

カーネーションはナデシコ科ナデシコ属の植物である。花言葉は「無垢で深い愛」。撫子の蘭に対する無垢で深い愛を表現するのにふさわしい花といえるのではないだろうか。

物語のターニングポイントになった黒咲百合。本当は悪くはないはずなのに、蘭が落とし穴に落ちるきっかけを作ったと言っても過言ではない。黒い百合が咲くといった願いが込められているのだろう。クロユリの花言葉は「呪い」。百合により、蘭は撫子に正しく叱られ、優しく怒られるようになった。百合の申請書類は、まさしく「呪い」だ。

キャラクターの名前から、いろいろなことを想像できる。これも作品に深みを与える要素だと、私は解釈している。

最後に

コミック百合姫2025年8月号に掲載されていた読切『正しく叱って、優しく縛って』。大きなミスを犯した蘭が撫子に叱られる姿は、単純に可愛い。逆らったら、破滅するかもしれないその怖さが、蘭の可愛さを倍増させるスパイス。

餡実先生の描く百合漫画をもっと読みたいなと感じるようになった。『正しく叱って、優しく縛って』って本当に良いですねぇ。