『ひなちゃんが生きてるなら』1話の感想を紹介することに。
『ひなちゃんが生きてるなら』1話の基本情報・内容
| タイトル | 『ひなちゃんが生きてるなら』1話 |
|---|---|
| 作者 | 紬めめ(@0mememe1) |
| 掲載誌 | コミック百合姫2026年1月号 |
| 出版社 | 一迅社 |
| 編集部のTwitterアカウント | @yh_magazine |
| 発売日 | 2025年11月18日 |
| ISBN | 4912137390168 |
| サイズ | B5 |
水神のアマツメ様が崇められている山々に囲まれた渦戸村。1984年、渦戸村で雛子という少女が神隠しに…それから4年後の1988年。雛子は当時の姿のまま発見された。
親友の空は雛子との時間を取り戻そうとするものの、雛子は鬼っ子として忌み嫌われる現実が。そして、空と雛子の背後に忍び寄る白い影。
果たして、空と雛子の運命や如何に。
- 4年経っても変わらない空と雛子の百合
- 渦戸村に潜む白い影の謎
- 雛子に秘められた秘密
4年経った後も変わることのない愛
『マユノウタ』に続いて、ホラーを題材にした百合漫画ですか。昨今の百合姫はダークな雰囲気を持つ百合漫画が多いなと思ったり、思わなかったり。
電撃マオウの『私を喰べたい、ひとでなし』とかまんがタイムきららフォワードの『最果てのともだち』といった具合に、ホラーを題材にした百合漫画は他にも。
互いに依存し続ける空と雛子の関係性の重さに加え、空を傷つけた存在を目にしたときの雛子が見せる怒りの表情が作品の魅力なのかなと感じた。
空の心の大半を占めるのは雛子なのに対し、雛子もまた空を行動原理にしている。
空が雛子を離さないと強く誓うシーンが特に印象的だった。暗い暗い水の底に沈んでいく空と雛子を見ていると、2人だけの世界といった感じが…
人間のドロッとした感情や水の描写、見えない恐怖の演出など、光るところはいくつもある。神隠しにあったはずの雛子がどうして帰ってこれたのか・空と雛子に忍び寄る存在はいったい何者なのか・アマツメ様は一体何なのかなど、物語を奥深くさせる要素も散りばめられている。
ホラー要素が強い百合が好き・考察しがいのあるホラー作品が好きといった方に刺さるのかなと。
水から読み解くホラー
水とホラーは相性が良いことを『ひなちゃんが生きてるなら』を読んでいて、改めて実感する。
Jホラーの『仄暗い水の底から』『リング』『学校の怪談4』といった具合に水を連想させるホラー映画がいくつもある。
水滴の滴る瞬間は、場面が大きく転換する・何か恐怖が訪れるかもしれないといった期待や不安を抱かせることも。
井戸から落ちた・津波に巻き込まれた・川に流された・水に潜む怪異に引きずり込まれたなど、水にまつわる怖さやパニック、アクシデントを連想する方も多いかもしれない。
大洪水の描写が描かれた『ドラえもん のび太と雲の王国』も初見のときに恐怖心を抱いた。ドラえもんが故障+誰もいない+真っ暗な夜+大洪水+頼みの道具が使えないという絶体絶命な状況下がパニックに陥らせるようだ。
怪異のホラーもあれば、大災害に伴うパニックホラーと水を題材にしたホラーの表現技法は多岐にわたると思う。
水の底は深い闇を連想させるし。空と雛子は2人で生きるために自ら深い闇へと消えていくのかなといった疑念を抱かせる。底がどこまでなのか分からない・どこまでもがけば水の中から出られるのか分からないといった不安などが、水を題材としたホラーをより面白くするスパイスな気がする。
雛子の頭から血液が滴り落ちる瞬間を見ると、雛子は大丈夫なのか・雛子は一体何をするのかといった感情を引き出しているのも印象的だった。血の滴り落ちる瞬間も、一種の怖さを抱かせる描写ではないだろうか。空を傷つけたことによって生じた雛子の激情は、あまりにも大きかった。
クトゥルフ神話のダゴンなんかも水を連想させるホラー。淀んだ水とかをイメージさせる。『デジモンアドベンチャー02』に登場したダゴモンが潜む海なんかも何とも言えない恐怖を視聴者に与えていた。登場人物の葛藤や恐怖・出口が一体どこにあるのか検討もつかない世界・薄暗さといったもので、不安などを抱かせていたのかなと。
水の中をもがけばもがく程、いたずらに体力を消耗し、水の底に沈むかもしれない恐怖。そういった感じの恐怖を水を題材にしたホラーに落とし込みやすいのではないかと、私は解釈している。雛子がどうやって現世に戻ってこれたのかが疑問だ。水の中をもがくような描写が雛子の帰還で描かれるのかどうかに期待したい。
『ひなちゃんが生きてるなら』では、水を連想させる単語がいくつも散りばめられていた。
- 渦戸村→うずまき・うず潮
- 水神様
- アマツメ様
- 水無月祭
渦戸村と聞くと、うずまき・うず潮といったものを連想させる。ちなみに、『うずまき』というホラー漫画がある。2000年には、映画化されたことも。私は映画のテーマソングをDo As Infinityが歌っていることしか分からないけど。
都会から隔絶された村というシチュエーションも恐怖を演出する舞台装置なのだろう。独特の風習や隣人との関わりから逸脱すると、忌み嫌われ、排他されていくような。
『金田一少年の事件簿』のような推理漫画においても、村を舞台にした事件が描かれている。閉鎖された村で起きた事件の犯人を見つけ出し、無事に出られるのかどうかというシチュエーションでしか得られない恐怖がある。
村を題材にしたホラーといえば、『ひぐらしのなく頃に』なんかも入るのかなと。
後は目に見えない存在も恐怖をお膳立てする方法だと思う。テクモの『零』とか。目に見えないからこそ、姿・形が分からないからこそ、恐怖を抱く。対処が分からないと、尚更だ。
『ひなちゃんが生きてるなら』に関する用語
『ひなちゃんが生きてるなら』には、いくつかの単語が登場する。物語を読み進めていくうえで、作中に登場するキャラクター・単語を整理することに。
上野空
上野空は物語の主人公。基本的に空の視点で話が進行していく。神隠しにあった雛子の親友だ。4年間にわたって、雛子を待ち続けた。
天をイメージさせる空が用いられていることを考えると、雛である雛子を見守り続ける女の子といったところか。
1984年の水無月祭で雛子とお揃いの浴衣を着こなし、手をつないで楽しむ約束を果たせなかったことを悔いていた。かつての約束という重みを持たせることにより、キャラクターの関係性や雛子の存在感をより際立たせていると思う。雛子との約束を破ると、空は一体どうなってしまうのか。その恐怖感も『ひなちゃんが生きてるなら』の魅力の一つだと、捉えている。
雛子
雛子はもう一人の主人公。空の前では可愛らしい笑顔を見せるのに対し、空を傷つけた者たちに対しては怒りを露わにする。1984年の水無月祭で神隠しにあい、1988年に帰ってきた。神隠しから帰ってきたことから、村人たちから鬼っ子と呼ばれるように。
雛とは、幼い・可愛らしいといった意味を持つ。雛鳥なんかを連想させる。空の懐で生き続ける雛鳥といったところか。
雛といえば、他にも雛人形もイメージする。雛人形は女児の無病息災や幸せな家庭を築くことを願うための物だ。雛子自身、親から幸福になれるよう名付けられたのだと思う。
人形が魂の宿る依り代とするならば、雛子は神を宿せるだけの力があるのかなと思わなくもない。
渦戸村
渦戸村は作品の舞台。豊かな水に恵まれた場所なのだとか。村人も水に対する畏敬の念が強く、水神様が祀られている。
水は農業において重要な役割を持つ。水があることで、田んぼの稲が育つし、畑の野菜たちが実る。漁業において、豊漁を祈る役割も持つ。
日本には、水にまつわる神が数多く存在する。
渦戸村という名前から、うずまきやうず潮といった特定の場所に留まらせたり、引き込む感じを連想させる。一度、神隠しにあえば、村から出られないと。
塒神社
塒神社は渦戸村一番の古社。アマツメ様と呼ばれる女神が祀られている。神隠しの伝承があり、雛子が神隠しにあったことから物語が始まった。
塒は眠るための場所。鳥小屋といった意味も持つ。鳥の雛を連想させる雛子が眠る場所といった印象を受ける。
土偏である塒が用いられていることを踏まえると、その土地の神が眠る場所と捉えることもできなくも。作中に登場する白い影が塒にしている場所が塒神社と。
神隠しにあった子供が帰ってきた際、行方不明当時の姿だったことを踏まえたら、うず潮で対象を留めるといった感じで神隠しにあった子供の時を止めるような気がした。
アマツメ様
アマツメ様は渦戸村で祀られている水神様。アマツが「天の」といった意味を持つことから、天の女神といえば良いのか。
天照大神の荒御魂である賢木厳之御魂天疎向津媛命(つきさかきいつのみたまあまさかるむかつひめのみこと)に「アマツメ」の四文字があるなと。荒御魂とは、神の荒々しい魂のことだ。自然災害や争いを引き起こすとか。神隠しにあった子供が戻ってくると、災いが起きることを踏まえるところは、荒御魂が災いを起こす様子を彷彿させる。
神隠しから帰ってきた子供は、アマツメ様から見放された人でなしとみなされ、鬼っ子として忌み嫌われる。アマツメ様も手に負えないといったところか。作中における白い影は、雛子を連れ戻そうとしている感じも。
天照大神も女神でしたね。太陽を司る。天照大神と聞くと、『カードファイト!! ヴァンガード』のCEOアマテラスというカード辺りを。
水無月祭
水無月祭は渦戸村で毎年、6月に塒神社で行われている祭り。水無月祭で一人でいる子供はアマツメ様が水の底に連れていくという言い伝えが。連れていかれないためには、子供は誰かと手を繋ぐ必要がある。一人じゃないですよというのをアマツメ様にアピールして、現世に留まりましょうということか。
渦戸村で浮いたことをすると、ひとりぼっちになるから、命がないと。
水無月とは、旧暦の6月を意味する。書いて字の如く、水の無い月と読める。古語で「無」は「の」と読む。要は、水の月ということだ。水の無い田んぼに水を入れ、豊かにしていくと。
10月の神無月は、神の月を意味し、農作物の豊作を神に感謝する月である。10月に神々が出雲大社に集まることでも有名だ。神無月と聞くと、『神無月の巫女』をイメージする方も多そう。
水無月祭に戻るけど、神隠しにあった子供はどちらかというと、神の生贄的な側面もあるような。ひとりぼっちの子供を寂しくさせないとか都合の良いことを言っているものの。本来なら、空が神隠しにあうはずだったのではないだろうか。ところが、偶然引っ越してきた雛子が身代わりになったことで空は神隠しから避けられたと、私は解釈している。
村八分
鬼っ子とみなされた人間は、周囲の人間達から忌み嫌われることは村八分も同然なんだなと。雛子を人間として見ているのは、空と駄菓子屋の店長。駄菓子屋の店長は長年にわたって子供達を見守り続けているのだろう。
駄菓子屋が村の子供達が集まる場所と加味すると、神隠しにふさわしい子供を見極める場所・子供達を監視する場所といった印象も。作中に登場した駄菓子屋の名前が「じゅうじや」。従者と読めなくもない。空が「おばちゃんは全然変わっていなかった」というセリフは、今後の展開を追っていく際のヒントなのかなと感じた。
最後に
とある村を舞台にした『ひなちゃんが生きてるなら』。ノスタルジックな感じと同時に忍び寄る恐怖を感じ取ることができる百合漫画だ。
空と雛子の強い繋がりに加え、雛子の秘密など、いろいろな見どころがある。ホラーを題材とした百合が好きな方は、一度チェックしてみるのもありだと思う。
この記事へのコメント