『初凪ヒメリウム』2話の感想を紹介します。
『初凪ヒメリウム』2話の基本情報・内容
| タイトル | 『初凪ヒメリウム』2話 |
|---|---|
| 作者 | 鹿冬カト(@katokato_22) |
| 掲載誌 | まんがタイムきらら2025年8月号 |
| 出版社 | 芳文社 |
| 発売日 | 2025年7月9日 |
| ISBN | 4910083450851 |
| サイズ | B5 |
アクアリウムを始めたいものの、お金の問題に直面する陽姫。家にあった水槽などが使えるかどうかを知るため、陽姫は湊本さんへ相談することに。
【きらら8月号】3話連続ゲスト第2話!鹿冬カト先生「初凪ヒメリウム」!
— まんがタイムきらら編集部 (@mangatimekirara) July 8, 2025
祖母の水槽をきっかけに
アクアリウムの世界に足を踏み入れた
主人公・陽姫(ひめ)ですが、
アクアリウムを本格的に始めるには
覚えることも、お金も、気軽にとはいかないようで…🫧 pic.twitter.com/AkdBYibNuj
『初凪ヒメリウム』2話の感想
『初凪ヒメリウム』2話の感想を3つのセクションに分けて紹介することに。
- 経済的問題に直面する陽姫
- 優しくガイドする湊本さん
- 幻想的な扉絵
経済的問題に直面する陽姫
陽姫がアクアリウムを始めるためにお金がかかることに悩まされるところから始まった。
お金のことで悩む陽姫が宝くじで1億円当たれば解決できると考えるシーンが印象的。10億あれば足りるかなと現実逃避するところがまた…汎用性の高そうな1コマだなオイ!!
『初凪ヒメリウム』2話の2ページのところに宝くじで1億円当たれば解決できると現実逃避するシーンを用意することで、読み手の興味を持続させようという狙いだな。宝くじで億単位のお金が当たれば、いろいろなことが解決しそうだなと感じなくもないけど。少し、一例を出しますか。
2025年7月7日にアニメの放送がスタートした『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ! (※ムリじゃなかった!?)』。『わたなれ』の愛称で親しまれているこの作品は、ヒロインの真唯が主人公のれな子に告白するところからスタートする。インパクトのある描写を冒頭に用意することにより、「どうしてそうなった?」「一体どうなるんだ?」といった興味を引き出せる。最初の3ページ・冒頭の数コマが読む・読まれるといったものが決まるのだと思う。
陽姫の感情表現が豊かで、読んでいて楽しくなる。キャラクターが生きていると言えば良いのか。そういった感情を受ける。表情・フォント・吹き出し・描き文字・効果線・背景といったものでわかりやすく伝えていた。表情だけじゃなく、フォントや吹き出しなどに変化があると、キャラクターが一体どんな感情を抱いているか・どのような状況なのかがわかりやすく感じる。1コマ、1コマにテクニックが詰まっていて、『初凪ヒメリウム』をはじめとした、きらら4コマの奥深さみたいなものを垣間見た気がした。
湊本さんが作ったアルバイト募集のチラシを見た時の陽姫の表情も面白い。そのクオリティにドン引きする陽姫があまりにも辛辣すぎて…確かに、センスが…とか感じたけどぉ!!「クソださ怪文書の迷惑ポスティング!??」はパワーワードすぎる。湊本さんのライフをゼロにするのに十分すぎるだろ。中盤から後半に移るかなといった段階で、陽姫が湊本さんが作ったアルバイト募集のチラシを見るシーンが用意されていた。こういった部分も、最後まで作品を読ませる工夫なのかなと感じなくもない。物語の構成はもちろん、構成に伴うセリフ選びなども重要だと実感する。
読み手の記憶に残る1コマを作ることが大事なのかなと。『初凪ヒメリウム』2話は変形させたコマ枠が前回に比べ、少なかったと思う。ゼロではなかったけど。それでも、インパクトのあるシーン・読み手が拡散したいと感じる1コマを用意しようといったものを感じた。漫画をヒットさせるためには、SNSの存在は切っても切り離せないし。その辺も踏まえると、陽姫がお金で悩むシーン・陽姫がアルバイト募集のチラシを目にしたシーンは、SNSで拡散させることを期待した1コマなのではないかと、私は解釈している。
『初凪ヒメリウム』に限らず、きらら4コマの多くが読み手の記憶に残る1コマ・拡散したくなる1コマを意識しているような気がする。
ちうね先生の『紡ぐ乙女と大正の月』における紡がプリンを作るシーンとか。「ぷりぷりプリン美味しいプリン」というハッシュタグとともに、プリンの写真・紡がプリンを作るシーンを描いた1コマを目にすることがある。
きららベースにて「紡ぐ乙女と大正の月」第27話を更新です!
— まんがタイムきらら編集部 (@mangatimekirara) March 12, 2022
…なぜかよくわからないですが、プリン好きには必見(?)の回になっております。
さあ今日のおやつはプリンで決まり!https://t.co/dJmlE68dS3#ぷりぷりプリン美味しいプリン
プリンと一緒にコミックスもよろしくね♪
きらら編集部もハッシュタグを使っていた。作品の認知度を上げるための1コマ・セリフといったものを重要視していることを、きらら編集部の投稿からも察することができる。
『NEW GAME!』の「頑張るぞい」も記憶に残る1コマ・セリフだと思う。
陽姫が湊本さんに家にあった水槽などを見せるシーンの際、陽姫の手や水槽がコマ枠から飛び出ていた。これにより、陽姫の手元・水槽などに自然と目が行く。これが視線誘導というやつか。陽姫の手元の辺りに陽姫のセリフを用意することで、水槽などについて相談したいことがあるといったことを読み取りやすくなる。
視線誘導といえば、陽姫がアルバイト募集のチラシを目にするシーンも、チラシに目が行くように誘導されていたような。陽姫がマジックを目にし、「どうしてこんなところにマジックがあるのだろう?」という疑問を感じるところからスタート。マジックというプロップを用意することにより、陽姫と読み手の興味を持続。マジックがどうして置いてあったのかという疑問を2コマ目以降で解消する。さらに、独特なセンスのチラシでさらに興味を促した後、陽姫の辛辣なセリフと表情を用意すると。たった1コマの印象を強くするため、入念な下準備が他の3コマでおこなわれていることを実感した。
陽姫が湊本さんに塩を傷口に塗り込むような言葉を発するのも笑ってしまった…
湊本さんが作ったネームプレートに描かれていたメダカの絵を見て、嫌な感情を浮かべる陽姫もおもろい。吹き出しを黒くすることで、陽姫の不安・嫌な気持ちをわかりやすく伝えている。湊本さんの期待に満ち溢れたセリフとのギャップが面白さを引き立てているなぁと。
優しくガイドする湊本さん
湊本さんのセンスがいろいろな意味でヤバかった…独特過ぎたな…
アルバイト募集のチラシを作った陽姫をべた褒めする湊本さんが特に印象的だった。「優勝」「天才」と褒められ、堕ちそうになる陽姫、チョロ過ぎるだろ。包容力のある湊本さんがかわいすぎる。
陽姫が脳内で思い浮かべたドSな湊本さんももっと見てみたさが…minatoという名のアクアリウムの中で陽姫という名のヒメダカを愛でる湊本さん。妄想は孤独を広げてしまう…アクアリウムに関するノウハウだけではなく、アルバイトとしての採用により、経済的な悩みを解消し、湊本さんなしじゃアクアリウムができなくなるといった具合に。湊本さんの誉め言葉により、陽姫がさらにminatoから抜け出せなくなるような。
コマ枠から飛び出したり、コマ枠を無くすことにより、湊本さんの感情・アクションをより目立たせていたなと感じた。場面が大きく変化していることも、湊本さんがコマ枠から飛びしている1コマで表現されていたのもポイント。後は陽姫に対し、笑顔で採用決定を告げた際の湊本さんはキラキラしていた。その笑顔が眩しい…
アクアリウムが好きかどうかを陽姫に問いかけるシーンも温かみみたいなのを感じたな。その時の吹き出しが透明になっていたことで、湊本さんのセリフ・感情がよりストレートにつたわってくるような感覚を覚えた。
湊本さんみたいなキャラクター、鹿冬先生は好きなのかなと思うことも。『クラッシュオンセブン!』でも、ギャップのある大人のお姉さんが描かれていたし。包容力がありつつも、裏の顔が本当にヤバかった。ギャップのある一面は湊本さんに受け継がれている。陽姫に対し、過保護になるかどうか。minatoが段々、陽姫を束縛するためのアクアリウムに見えてきたな。『クラッシュオンセブン!』はまんがタイムきらら2024年3~5月号に収録されている。気になる方はチェックしてみてください。
湊本さんが陽姫を採用した決め手は、以下のものが頭に浮かぶ。
- やる気がある
- アクアリウムについて勉強している
- アクアリウムが好き
- 湊本さんが好き
採用された理由については作中でも触れられていたけど、陽姫は湊本さんに懐いている。湊本さんに懐いていたこともダメ押しの一手ではないかと妄想するわけで。
湊本さんがアクアリウムに用いられる水槽について解説するシーンも分かりやすかったな。アクアリウムに関する知見を深めるきっかけになる。解説するシーンにおいて、アクアリウムに興味を抱く動機づけ・視線誘導が用いられていたのではないかと感じた。湊本さんがアクアリウムに用いられる水槽について解説するシーンのコマ割りは以下の通り。
陽姫がminatoに来店した理由・問題の整理・陽姫の疑問・疑問の解消・疑問のおさらいが1ページに集約されている。湊本さんが問題を整理し、陽姫が疑問に感じる。その疑問に湊本さんが答えるといった流れだ。序盤に一体何があったかを振り返りつつ、読み手の疑問を引き出していく。読み手の興味を持続させるためのテクニックといったところか。
ガラス水槽・アクリル水槽の違いを解説するためには、1コマで収まらない。どう考えても無理。だからこそ、下の2コマをつなぐことで、説明するためのスペースを確保していたのだろう。ホワイトボード上に違いを記載することにより、陽姫は湊本さんから講義を受けているといった印象を与える。
湊本さんがアクアリウムに用いられる水槽について解説を始める際、コマ枠から飛び出していた。これにより、読み手の視線を誘導させているのかなと。フォントを変えることにより、陽姫の疑問が解消される・アクアリウムに用いられる水槽には一体何があるのか分かるといったことを感じさせる。
『星屑テレパス』5巻においても、海果が一つの発見をした海果を見た瞬が海果の疑問に答えるシーンがありましたね。
瞬が海果の発見を褒めた後、海果と読み手の疑問に答えるシーンに突入する。瞬を大げさに見せることにより、読み手の興味を引き、話を読み進めることを促していた。読み手に作品を読み進める動機づけの役割を果たしていたといったところか。コマ枠を変え、どのような場面なのかをわかりやすくしていた。この辺は作品によりけり。
『初凪ヒメリウム』や『星屑テレパス』のような作品を読んで気付いたことは、その分野の初心者が用意されていることだ。カルチャー・職業を題材にした作品の読者は全員が全員、その分野に詳しいわけではない。全く分からない初心者の方もいるだろう。仮に、陽姫がアクアリウムについて最初から詳しい場合、アクアリウムについて全く分からない読み手は置いてけぼりを喰らう可能性がある。何を言っているか分からない・分からないからつまらない・つまらないから読むのを止める。こういった負のスパイラルを避けるためにも、初心者のキャラクターを用意することが重要だと思う。
考える余地を与え、答えを聞いた時になるほど!と感じさせる。『ウイニングアンサー!』でも同様のことを語ったのだけど、『初凪ヒメリウム』などの作品においても、同様のことが言えそうだ。
陽姫のように特定の分野における初歩的な疑問を持っていると、話のネタが増えるし、初心者に寄り添っていることを感じ取ることもできる。物語の主人公は読み手の視点に立つ存在。多くの作品は基本的に主人公の視点に立ち、物語を追っていくことになる。読み手が感じるであろう疑問を抱くことで、感情移入することもできなくもない。
陽姫は読み手の視点に立つ存在であり、湊本さんは陽姫と読み手の疑問に答え、誘導する存在だ。いわばモノリス的な。
カルチャーを題材にした作品をいくつかピックアップし、初心者のキャラクター・上級者のキャラクターを簡単な表にまとめてみた。
| 作品名 | 題材 | 初心者 | 上級者 |
|---|---|---|---|
| 初凪ヒメリウム | アクアリウム | 陽姫 | 湊本さん |
| 星屑テレパス | モデルロケット | 海果 ユウ 遥乃 | 瞬 彗 音々 みちる |
| ウイニングアンサー! | 競技クイズ | 香奈 亜衣(ひかりから見た場合) | 亜衣(香奈から見た場合) ひかり |
| ゆるキャン△ | キャンプ | なでしこ | リン |
| うちの師匠はしっぽがない | 上方落語 | まめだ | 文狐師匠 |
その分野に慣れていないキャラクターの存在は読んでいくうえで、心強く感じる。初心者のキャラクターが少しずつ経験を重ねることにより、成長・変化を見ることができる。陽姫がアクアリウム初心者にアクアリウムについて教える未来もあるのかな。そういった楽しみ方ができる点も、カルチャーを題材にした作品の魅力だ。
作品によっては、上級者のキャラクターが主人公の目標・ライバルの役割を担う。バトル漫画だと、悪役と言えば良いか。
湊本さんも、他作品の上級者のキャラクター同様、心優しい存在だ。でも、陽姫に対して、ドSな感情をぶつけることに…うーむ…
幻想的な扉絵
幻想的な扉絵から物語が開始していたのも印象的だ。本を開くと、アクアリウムとそこに浮かぶ陽姫の姿が飛び出すというもの。まるで、飛び出す絵本的な。1話の時も水槽をコマにしていた。こういった表現も『初凪ヒメリウム』の魅力だと思う。おしゃれな1コマが読み手を楽しませる。
2話の冒頭で出てきた単語を簡単に整理することに。
(1)ろ材(ろ過材)
水槽の水を綺麗にするために用いられる。
(2)スクレーパー
水槽のコケ・汚れを取り除く道具。
(3)ソイル
アクアリウムに用いられる土。水草の育成・水質の改善などに用いられる。
最後に
『初凪ヒメリウム』2話は陽姫がアクアリウムのお金・道具などに関する悩みを解消する話。陽姫はminatoで一体どのような活躍をするのか。
アクアリウムに詳しくない方にも優しく寄り添った作品だと思う。登場するキャラクターも可愛いので、もっと活躍を見れたらなと感じるばかりだ。
アクアリウムはお金のかかる趣味だと思う。どの趣味も突き詰めると、それなりのお金がかかるけど。生き物の命に触れる以上、それなりの責任が伴うのではないだろうか。責任があるかどうかを示すものの一つがお金な気がする。買いきれなくて逃がしてしまうみたいなことがあると、昨今問題になっているコウライオヤニラミや特定外来生物に指定されたアリゲーターガーなどの悲劇も。
お金のことを提示されると、メダカを飼育するためには愛だけじゃいけないということを実感できる。ヒメダカが生きやすい環境を整えるためのお金を用意することも愛だと、私は解釈している。
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