【感想】『マユノウタ』3話~救いの手と見えざる手~

『マユノウタ』3話の感想を紹介することに。


もくじ

『マユノウタ』3話の基本情報・内容

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タイトル『マユノウタ』3話
作者シクシク(@sisikuku)
掲載誌コミック百合姫2025年11月号
出版社一迅社
編集部のTwitterアカウント@yh_magazine
発売日2025年9月18日
ISBN4910137391055
サイズB5

あらすじ

新たに始まった茉夢と小町のいつもどおり。身寄りをなくした茉夢は、施設へ一時保護されることに。いつもどおり過ごしたい茉夢は、母親である小町に救いを求める。一方、茉夢と離れ離れになるのかどうか不安に思う鈴。小町に対する嫉妬心を募らせる鈴は、茉夢の一番の友だちであろうとするため、自分と付き合ってくれないかと茉夢に声をかける。


果たして、茉夢はいつもどおりの日々を過ごすことができるのか。小町は一体どのような行動に打って出るのか。


物語の核
  • 茉夢と小町の秘密の昼休み
  • 茉夢と小町と鈴の距離感
  • 鈴の嫉妬と友情
  • 茉夢の今後
  • 事件の捜査状況

『マユノウタ』3話の感想

ファーストキスの味は、レモンでもイチゴでもミルクでもない。


しょっぱいシャケの味。


小町による突然のファーストキスは、予想外の不意打ちだった。施設で寂しい毎日が始まるかもしれないと不安に感じる茉夢もこれにはビックリ!!


いつもどおりの日常が無くなるかどうかの瀬戸際に立たされている茉夢を救済しようとする小町が尊い…


階段の踊り場で2人だけのランチを過ごす茉夢と小町の百合が特に印象的だったな。不安におびえる子供をあやすような感じも。小町はまぎれもなく、茉夢のお母さんだった。茉夢の不安や恐怖を理解し、救いの手を差し伸べる。だからこそ、茉夢は小町の懐に居心地の良さを感じる。


小町の表情やセリフを見ていると、どこか惹き込まれるような。1話の時に取り上げた『アトラク=ナクア』のような作品とかにハマる方がいるのも分からなくもない。


茉夢に自分の存在・愛情を感じさせる小町にゾクッとした…心臓を握りしめられているような…ふとした拍子に心臓が握りつぶされてしまいそう。


茉夢の右前腕を優しく触れることで、小町の優しさ・怖さがよりダイレクトに伝わってくる。末梢から中枢に登っていくような触り方なんですよね…小町。指や前腕から徐々に心臓へと。そう考えると、ゾクゾクしてしまう。


雨が小町の愛情と恐怖におびえる茉夢の脂汗のように見えた。小町の意に反した発言をしたり、行動を取ったりすると命を奪われる可能性もないとは…作中に描かれていた雨は、茉夢のメタファーなのかもしれない。


屋上の出入り口に蜘蛛が巣を作っていたな。茉夢はさながら、小町が張り巡らした蜘蛛の糸に引っかかった蝶のようだ。母娘として関係を深めていく様子や一歩間違えると命の保証があるかどうかわからない危うい関係性。こういった部分が『マユノウタ』の魅力だと思う。


屋上の出入り口のドアに使われている窓から、見えざる者が見ているような感じを受けた。読み手からしてみれば、第三者視点で茉夢と小町のやり取り・物語を見ているなと実感できる。薄いはずのドアが見た目以上に厚そうといった印象も…


コミック百合姫2025年9月号に掲載されたゆあま先生の『たゆたう恋の散り際に』の告知イラストっぽさも。あちらは金木犀の花が主役のやり取りを隠しているような構図で、秘密のやり取りといった印象を与えていた。


茉夢と小町のやり取りを屋上の出入り口のドアに使われている窓から見せる演出は、外の雨と影で秘密な感じとどこか危うい感じがより強調されていた。小町の見せるお母さん像に戸惑いつつも、深く深く堕ちていく感じも影とかで表現されていたのではないかと、私は解釈した。


お母さんとは一体どのような存在なのか・お母さんは一体何をするのかを理解していない茉夢の戸惑いは、リアリティがあった。居心地の良さを感じるからこそ、小町の愛情を拒否できないと。


家族とは一体何かすら、茉夢はわかっていないのかも…


小町のセリフを見ていたら、茉夢に小町との時間を大事にするよう言い聞かせている。人によっては、命令しているようにも。母娘というフィルターで見れば、愛情を与えていると映るかもしれない。別の角度から見たら、恐怖みたいなものを垣間見ることが。


茉夢にも手伝ってもらわないといけないって一体どういうことだろう???嫌な予感しかしない。小町の言葉に応じたら、絶対に後戻りできない。それだけは本能的に理解している。小町の下に帰りたいと言わなかったら、茉夢の命はなかったと思う。肉片一つ残っていなかったんじゃないかな。


小町がパンに塗っていたイチゴジャムもなぜか印象に残った。まるで、血液を感じさせるような。イチゴジャムと聞いて、甘いもしくは酸っぱいをイメージする方も多いのではないだろうか。長期間にわたって保存できるようにするため、大量の砂糖が使われる。小町との母娘関係は甘いといったことを印象付けるためにイチゴジャムが描かれていたのかなと、考えたりした。


ジャムのドロッとした見た目は、小町のねっとりとした愛情あるいは牙を剥いた時に糸を引く唾液のような気も。しかも、冷たいジャムはぬるくなると、より甘さが際立つ。茉夢は小町に触れられている時、ぬるくなったジャムのような甘ったるい感じを全身で味わっていたのかな?


スプーンから零れ落ちたイチゴジャムは、茉夢が小町の手を取らなかったら、いつもどおりの日常が無くなることを表している側面もありそう。


茉夢は零れ落ちたイチゴジャムを見て、目の前でいつもどおりの日常が零れ落ちていく様を想像していたのかなと、私は感じた。


冒頭と後半部分にイチゴジャムの描写を描いているのを見ると、意味があるのかなと考えてしまう。日常を描くだけなら、冒頭だけでも別にかまわない。もう一度描くことで、何か意味があるのかなと考えるきっかけを読み手に与える。


朝食の場面で、小町は茉夢に「いつもどおりでいろ!さもないと私との幸せな毎日は送れないぞ!!」と遠回しに言っているからこそ、茉夢にとってイチゴジャムは印象に残るものになったわけで。


後、イチゴジャムは食卓やスーパーマーケットなんかで頻繁に見る食べ物だからこそ、日常をより強く感じることができるような。そういったことを踏まえると、冒頭に描かれていた朝食のシーンは意味があると実感した。


茉夢にとって、いつもどおりの日常がどれだけ大きいものか。


茉夢と小町の新たな日常にゾクッとした回だった。


『マユノウタ』3話の考察

茉夢が警察から事情聴取を受けていた様子に加え、茉夢といつも通りの学校生活が送れないかもしれないという不安に駆られた鈴が描かれた『マユノウタ』3話。茉夢と小町のやり取りにゾクッとしつつ、小町に嫉妬の炎を燃やす鈴など、見どころがいくつもあった。


ここでは、主に以下の点に触れていこうかなと。


  • 救いの手
  • 見えざる手
  • 小鳥遊鈴

救いの手

『マユノウタ』3話では、茉夢に差し伸ばされた手が多く描かれていたように思う。


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これは『キミが吠えるための歌を、』の作者・樫風先生が過去に出していた同人誌。いろいろな手が描かれているのが特徴的だ。


手の描写から、キャラクターの感情・状況を読み解くことができる。誰かを救おうとしている場面か・愛情を感じている場面か・緊迫感あふれる場面かどうかなど。


目は口程に物を言うという言葉があるように、手も口程に物を言うのかもしれない。


茉夢に救いの手を差し伸べたのは、鈴でも担任でも警察でもない。小町。


鈴の茉夢が好きな気持ちは本物なのかもしれないけど、茉夢の懐に踏み込んでいるのかといえば疑問が残る。茉夢の叔父達が殺された日、鈴は茉夢を救うことができなかった。救ったのは他ならない小町だ。


それでも、気にかけてくれるのは嬉しいと言っていたことから、鈴の優しさに感謝しているのは間違いない。


鈴が手を差し伸べる様子を見た茉夢から、優しさだけじゃ人を救えないと言っているような感じが滲み出ていたような。


茉夢の求める救いの手は、すごく難しい。優しいだけでもいけないし、一般論だけでどうにかなるものでもない。茉夢を理解したうえで、どういったことをすれば良いか考えなくちゃいけない。


茉夢が抱えていた問題は、簡単に解決できるものではなかった。下手に踏み込むと、事態をさらに悪化させる可能性も。場合によっては、茉夢の心に深いダメージを与える可能性だってある。


前述でも触れた『アトラク=ナクア』という作品においても、化け蜘蛛の初音が生徒達の運命を狂わし、弄びつつも、結果的に救済している面もないとは。(自らの養分としていたけど…


幼馴染と付き合っているものの恋のライバルがいる女子生徒・部活の顧問によるセクハラに悩まされている女子生徒・初音に運命を狂わされた恋人と妹がいる男子生徒など。初音と関わったことで、世間と隔絶された場所に囚われたものの、彼女達は愛する人と一緒にいられるようになった。メインヒロインの奏子も救っていた。


『アトラク=ナクア』に触れたせいなのか、小町は茉夢にとんでもないことをやらせようとしているのではないかと勘ぐってしまう。少なくとも、ジュース買ってきてとかそんな軽いものではない。後戻りできない状態に追い込むようなことだろう。


『アトラク=ナクア』でも、初音が気まぐれで助けた奏子に壮絶な状況に追い込んだ男子生徒の命を奪わせていたしな…


『マユノウタ』が『アトラク=ナクア』をなぞっているとは思っていないけど、それでも茉夢は小町の行動に葛藤し続けることになりそう…


茉夢がいつもどおりの日常を送るためには、一般論や謎の精神論じゃ難しいことが分かっているからこそ、複雑な感情を抱く。


見えざる手

作中に描かれている怪異の手。悪魔の見えざる手といえば良いのか。怪異の手が一体何なのかを茉夢は知っていくことになると思う。畏怖の対象として描かれているけど、ひょっとしたら神の見えざる手のように見えなくも。


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見えざる手と聞いて、直近だと『遊戯王オフィシャルカードゲームデュエルモンスターズ』に登場するヘカトンケイルをイメージした方も一定数いるのではないだろうか。神の見えざる手にヘカトンケイルとルビが振られていた。


神の見えざる手は、アダム・スミスの『国富論』にも出てくる。個人が利益を追求すると、巡り巡って社会の利益になるという意味合いで書かれている。小町がおのれの利益のために救いの手を差し伸べることで、結果的に茉夢が救済されるといった具合に。


茉夢に向けられた無数の怪異の手が連れていくのは、本当に地獄なのか。天国の可能性もゼロではない。怪異の手と一緒に描かれていたカラスの大群。カラスは死などをイメージされることが多い鳥だ。時には、仲間の死骸を食べることもあるそうな。茉夢の前に現れたカラス達は、死期の近かった茉夢を喰らおうとしたのではないかと解釈している。叔父達の行動一つで、茉夢は命を落とす可能性があった。ろくに食べ物を与えられていなかったことから、栄養状態も悪かったはずだし。


また、カラスは負のイメージだけを持つ生き物ではない。日本神話に登場する八咫烏のように神聖な存在として伝えられることもある。日本サッカー協会のシンボルにも、八咫烏が選ばれている。北欧神話だと、オーディンがカラスを使役していましたね。


カラス達が死期の近かった茉夢を救済し、天国へと導く可能性だって、十分あったと。


怪異の手やカラスの大群といった見えざる手は、茉夢を叔父達による苦しみから救おうとしていた面もなきにしも。茉夢の望む結果になるかどうかは別として…


茉夢に罪を犯させる可能性がある小町もまた、見えざる手の一つなのかも。


小鳥遊鈴

茉夢のクラスメイト・小鳥遊鈴。鈴は茉夢と一番仲が良いと思い込んでいた。だからこそ、小町に嫉妬し、小町に笑顔を見せている茉夢に愛憎が入り混じった感情を抱くことに。


小鳥遊とは、鷹がいなかったら、小鳥が安心して遊べるという意味を持つ。小町から見れば、鈴は茉夢をつけ狙う鷹なのかもしれない。茉夢の存在が鈴のアイデンティティを形成している面も。


最後に

小町の存在に焦る鈴。いつもどおりの日常を送ることができるか不安に感じる茉夢。


小町は一体どんな方法で茉夢を救済するのか。4話以降の展開も見逃せない。


参考資料

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