『僕らのアイは気持ち悪い』2巻の感想を紹介することに。
『僕らのアイは気持ち悪い』2巻の基本情報・内容
| タイトル | 『僕らのアイは気持ち悪い』2巻 |
|---|---|
| 作者 | 雨水 汐(@siousuisio0057) |
| 掲載誌 | コミック百合姫 |
| 出版社 | 一迅社 |
| 収録話数 | 6~11話 |
| 編集部のTwitterアカウント | @yh_magazine |
| 発売日 | 2025年9月18日 |
| ISBN | 978-4758029704 |
| サイズ | B6 |
小麦が付き合っていた人が姉のめぐるであることを知ったれむ。人形をもう作ってもらえないんじゃないかと不安に感じたれむは、小麦の前でめぐるを演じるように。
日々の生活で苛立ちを募らせ、小麦を意識するようになっためぐる・れむに自分の解釈を押し付けようとする虹。
それぞれの思い描く愛が交錯し、人間関係はより複雑に…小麦は自分だけのめぐるを作り出すことができるのか。そして、れむは自分を満たす人形を手にすることができるのか。
- 小麦と再会しためぐるの変化
- めぐるになりきるれむ
- れむに触れていくなかで変化する小麦
- 自分の解釈で拗らせる虹
心を通じ合わせる小麦とれむ
れむと接していくなかで、れむのことを確実に意識するようになった小麦が印象的だった。2巻でのやり取りを見た感じ、めぐるのことをまだ意識しているものの、最初の頃に比べて小麦はれむに対する想いが大きくなったと思う。めぐるのことが一番と言いつつも、自分の作った人形で大喜びするれむを想像していたし。
れむが小麦のことを理解し、否定することなく、小麦の望みを叶えたのも大きい気が。小麦の望みは、めぐるの人形を作ること。れむはめぐるになりきり、人形作りのために小麦に自らの体を触れさせていた。
傍から見れば、気持ち悪い・異常だ・狂っているといった考えが浮かぶかもしれない。だけど、本当に気持ち悪く、異常な光景なのかと言いたくなる。小麦は過去の失敗でめぐると別れてしまうという手痛い経験をしていた。対するれむも人形に対する偏愛から周囲に奇異の目で見られ、両親にお気に入りの人形を捨てられるという辛い経験を味わっている。
人形作りを通して、過去の傷痕を癒し、失ったものを取り返そうとしていると考えたら、小麦とれむの行為を理解することができなくもない。常識や自分だけの考えという名のフィルターだけで見てしまうと、小麦とれむのことを理解することができないような。
虹がれむに解釈違いといった言葉をぶつけていたけど、『僕らのアイは気持ち悪い』において、解釈という単語は作品を理解するうえで重要なキーワードのように思えた。
自分のことを理解し、自分の心に空いた穴を埋めてくれるれむは、小麦にとって大きな存在になっていったのだろう。対するれむも、かつて失った人形を作り直してくれる小麦と接する時間が愛おしくてたまらなくなっているのかもしれない。6話で小麦を否定することなく、丸ごと受け止めようとしたれむが印象的だった。小麦が変わり、立ち直るうえで、れむは欠かせない存在だと言えるのではないか。
めぐるをれむに否定された小麦は怒り心頭だっただろうし、小麦の初恋の相手がめぐるとしったれむはショックを隠せなかっただろうな。
人形をつくってもらうため、小麦と一緒にいるため、めぐるを演じるれむを見ていると、心が痛くなる。れむにとって、めぐるは大好きな姉であり、小麦を傷つけた憎き存在だからだ。めぐるが小麦と再会したことで、小麦はれむに人形を作るのを止めると宣言した。厳密に言うと、小麦の愛を性欲だとぶった切ったことが原因だ。
自分の心を奪い、別れた後も想いを募らせてきた人から愛や恋を全否定された小麦のダメージはかなりのもの。人形を作れなくなるほどに影響を与えている。これまで作ってきた人形を全て捨てようとしていることを踏まえたら、小麦はかなりの重症。また、気の合う小麦と一緒にいる時間を失うかもしれないと考えたら、めぐるによって小麦が人形を作れなくなるのは、れむにとってたまったものではない。
めぐるが小麦に会いたいとメッセージを送ったのは、小麦だけではなく、れむにとっても晴天の霹靂。小麦にとっては、めぐると再び付き合うチャンスだ。小麦がめぐると接触し、再び付き合うようになったら、れむは小麦と一緒にいる時間を失ってしまう。それ故に、小麦にめぐると会わなくても良いんじゃないかとアドバイスを送ったわけで。小麦を独り占めたい・めぐるに取られたくないといった独占欲もストレートに描かれていた。
めぐるとやり直せたら、小麦は自分のことをいらなくなるのではないかというれむの葛藤に心を締め付けられる…れむにとって小麦が必要不可欠な存在だということがよく分かる。めぐるとよりを戻せたら、小麦が人形を作る理由が無くなってしまう。人形を作る理由がなくなるということは、れむだけの人形を作る機会が無くなるということ。結果、れむはひとりぼっちに。
めぐるを演じている時のれむは精神をすり減らしているのかなと思うと…
大好きな人を傷つける人、それも自分の姉を演じるって中々なことじゃないですか???
最も嫌っているであろう人を演じるって簡単にはできない。めぐると血のつながっているれむだからこそ、めぐるを完璧に演じることができたのかもしれない。
れむとめぐるが実の姉妹であることを小麦が知った時、一体どんな反応を示すのか本当に気になる。めぐるに会いに行く小麦の背中を押したれむを見ていると、小麦とれむが一緒になって欲しい。
まめ助という名のイマジナリーフレンド
父親の浮気が原因で、性欲に対して強い嫌悪感を示すめぐる。小麦の心に深い傷を負わせたことに対して何と言えば良いか迷うものの、めぐるもまた小麦やれむと同様に心に深い傷を負った人間だというのがよく分かる。小麦と肉体関係を結ぶ時に父親の浮気がフラッシュバックすると考えたら、性欲や肉体関係を結ぶことに嫌悪感を抱くのも分からなくはない。
ただ優しく抱きしめて欲しかったというめぐるのセリフから、小麦に対する未練があるのを察することができた。未練があるからこそ、11話で小麦を再び試したわけで。同じことを繰り返したら、今度こそ小麦とめぐるは分かり合うことができない。
心に深い傷を負っためぐるにも、癒す存在がいる。それはまめ助という名のぬいぐるみだ。めぐるにとって、まめ助はイマジナリーフレンドのような存在なのかもしれない。イマジナリーフレンドとは、想像上の友人。めぐるの言うことを黙って聞き、どのような扱いをされてもじっとする。めぐるはまめ助と接している時に安らぎを感じるようだ。
ぬいぐるみには、布や綿が使われている。多くの方がぬいぐるみに触れた際、柔らかいと感じるのではないだろうか。めぐるはぬいぐるみの包み込まれるかのような柔らかさに癒しを感じていたように。
ぬいぐるみを思わせるアザラシ型ロボットのパロも世界で最も癒し効果があることから、ギネス世界記録に認定されている。外見の可愛さや触り心地の良さ、何かしらの動作を行った時の反応などが大事なのかなと思わなくもない。パロはいろいろな場所で利用されているため、知っている方も多い気が。
他にも、ファービーやたれぱんだ、すみっコぐらし、リラックマといった具合に癒しを感じさせるぬいぐるみが多数…
ぬいぐるみは自分の意志で動かない・話さないからこそ、めぐるは強い力でぬいぐるみを握りしめ、ストレスを解消したりする。描きおろし漫画で、まめ助を洗濯している様子などから、ぬいぐるみから発せられる匂いをかぐことで感情を沈めているのがよく分かる。2話の時も、めぐるはまめ助のぬいぐるみを嗅いで、気持ちを落ち着かせていた。
ベッドの上にめぐるを囲むようにぬいぐるみが置かれていたことから、ベッドの上がめぐるのテリトリーだと察することができる。ベッドの上に余分なスペースを無くすかのように置かれたぬいぐるみ達。隙間が無くなるくらいに物を置くことで、めぐるは不安をまぎらわしているのかなと。ぬいぐるみが無かったら、落ち着かないのかもしれない。
外に出かける時に持ち歩くカバンの中にまめ助のぬいぐるみを入れていることからも、めぐるにとってまめ助が切っても切り離せない存在なのが分かる。ぬいぐるみを触ったり、匂いを嗅ぐことで、自身の気持ちを落ち着かせている。作中におけるめぐるの行為を見て、気持ち悪いと思う人もいれば、よく分かると感じた人もいるのかなと。
小麦の服にもまめ助が描かれていたことからも、めぐるにとってまめ助は思い出深いキャラクターだと捉えることが。
めぐるにとって、まめ助やぬいぐるみが無くてはならない存在になっている理由は、小麦との思い出が詰まっているから。ぬいぐるみだったら、どれでも良いというわけではないようだ。小麦がめぐるの意思を汲み取らず、肉体関係を結んだことで破局したものの、小麦と過ごした日々が楽しかったことには変わりなかった。学生時代のめぐるは小麦と接することで生き生きとした表情を浮かべていたし。
ぬいぐるみといえば、『探偵ナイトスクープ』でとある4歳の女の子が肌身離さず持っていた犬のぬいぐるみの話が取り上げられていたことを思い出した。女の子の母親が子供の頃に買った物らしく、30年以上経過していた代物とか。何度も破け、綿が出てくるくらいにボロボロに。それでも、犬のぬいぐるみを大切していた女の子はどのような状態であっても、そのぬいぐるみを家族のように接していたのが印象的だった。どれだけ新しいぬいぐるみを渡されても、ボロボロになった犬のぬいぐるみを選び続けるその姿から愛情が感じられた。生まれた頃から近くで見守り続けたことが肌身離さず持ち続ける理由なのかなと思わなくも。
樫風先生の『ロンリーガールに逆らえない』においても、ぬいぐるみに関する興味深いエピソードが。作中に登場する空が大好きな彩花と離れ離れになるかもしれないといった時に彩花からプレゼントされたハリネズミのぬいぐるみを強く抱きしめていた。ハリネズミのぬいぐるみは彩花から初めてもらったプレゼントであり、彩花の存在を感じることができる唯一無二の宝物。寂しさや悲しさをハリネズミのぬいぐるみで紛らわしていたのかなと。
彩花もまた、空や空のお母さんに自分の気持ちを伝えることを決意した際、空からプレゼントされたヒヨコのぬいぐるみを抱えていた。ヒヨコのぬいぐるみに触れることで、空の存在や思い出を感じていたのかなと。
『探偵ナイトスクープ』や『ロンリーガールに逆らえない』の話をして、一体何が言いたいのかと言うと、ぬいぐるみや人形を手に入れたエピソード・過程が大事だというのが言いたい。ぬいぐるみに限らず、欲しいゲーム機やトレーディングカード、プラモデルなどを手に入れるためにお金を貯めたり、スケジュールを調整するなど、いろいろなやり取りがある。両親や友人からもらうといったことも。
めぐるにとって、まめ助はひとりぼっちから救った小麦の代わりともいえる存在だ。辛い時も、楽しい日々を思い出し、心を癒すことができた。人間に嫌悪感を示していたから、人の形をしていないまめ助に好意を向けられた部分もあるけど。
小麦のフルネームは、小豆小麦。まめ助も豆の形をしている。豆の名を冠していることも、好きな理由なのかなと思わなくも…
豆助を見るたび、小麦を思い出しているとしたら、強く握り締めたりすることで小麦にお仕置きをしているような。『クレヨンしんちゃん』において、ネネちゃんがうさぎのぬいぐるみに八つ当たりをしているのを見ると、強く握ったり、殴ったり、投げつけたりすることもストレス解消の手段のように思える。
ちなみに、めぐるが職場の同僚達の飲み会に嫌気を差していたことから察するに、社会や対人関係と上手く適合できないことも悩まされていたのかなと感じた。職場の同僚達の口から語られる仕事仲間の浮気に関する話題。性欲に嫌悪感を感じているめぐるにとってみれば、仕事仲間の浮気に関する話題は聞きたくない話の一つだったのだろう。父親の浮気で両親が離婚したのを目にしためぐるにとって、誰かの浮気話を聞かされるとか地獄でしかない。
それに、めぐるの趣味に理解を示さなかったのも、職場の同僚達の飲み会に嫌気を差していた理由なのではないだろうか。すべての趣向が受け入れられるわけではないとはいえ、理解できない顔をされるのはめぐるの心にダメージを与えるのに十分すぎる。自分自身を理解してくれる人が職場内にいないというのは、めぐるが居づらさを感じるのは無理もない。
人間嫌いのはずなのに、よく教師なんて仕事を選べるな???
めぐるや浮気した父親のような人を生み出してはいけないといった想いから、子供を教え育む教師という職業を選んだのではないかと解釈している。
夜行めぐるが一体どのような人間で、どうして恋や性欲に嫌悪感を浮かべていたのかが2巻を通してより深く理解することができた。
小麦を試すめぐる
めぐるは小麦と別れたものの、まだ未練があるのがよく分かる。
めぐるが一番と言ってくれたのが相当嬉しかったのか。だからこそ、心の奥を見て欲しいと小麦に感じるわけで。他者を知り、愛することができるのかどうかも、『僕らのアイは気持ち悪い』において重要なポイントだと思う。人によって、価値観や趣向が異なる。それを知ったうえで、人は好きな人と一緒に居続けることができるのか。好きであり続けることができるのか。
2025年の夏にアニメが放送された『わたなれ』も他者を知り、そのうえで他者を愛することができるかどうかについて丁寧に描かれていた。
『僕らのアイは気持ち悪い』2巻を読んでいると、めぐるは肉体のつながりではなく、心のつながりを求めているのがよく分かる。父親の浮気というショッキングな出来事を目にし、他人を信用できなくなったのだろう。肉体関係を結んでいる最中というのも相まって、性欲に対する嫌悪感がより一層強くなった。性欲というものがあるから、家族がバラバラになった。小麦がめぐるの体に触れたりするのに拒否反応を示すのも納得。
小麦と再び会い、小麦がやったことが一時の過ちだと理解させたかったのかなと。そのうえで、小麦と再び付き合いたいと。
学生時代の小麦とめぐるが歌って踊るシーン。『踊り場にスカートが鳴る』か何かですか?とりあえず、雨水先生が『踊り場にスカートが鳴る』が好きなことがよく分かった。
自分なりの解釈を求める虹
れむのクラスメイトである虹。小説投稿サイトにて、れむと虹を題材にした小説を投稿している純粋かつヤバい女の子。自分の解釈を他人に押し付けてくる。昨今、自分の解釈を押し付ける人が問題視されている。感想や考察などを書いている自分も自戒しなければならないなと感じることが多い。
批判してくるアカウントをブロックしていることや自分の意に反する行動を取るれむに対して冷たい言葉を投げかけてくる虹を見て、厄介だなと思った方も多いのではないだろうか。自分の解釈しか認めないというのが作中の言動を見ていて、よく分かる。
解釈違いって…
『魔法少女にあこがれて』かよ!ってツッコみたくなった。マジアベーゼがマジアズールにお説教するシーン。お前が言うかと言いたくなるような。
インターネット上に自由に創作物や感想などを投稿できる昨今だからこそ、解釈云々みたいな話題を目にすることが何度か。
虹もれむに対する想いが強すぎるが故に、強い想いをれむ本人にぶつけていた。その想いの形が人からしてみれば、気持ち悪いと映るのかもしれない。好きだからこそ、小麦と接する行為は虹にしてみたら、裏切り行為同然だと捉えるわけで。
父親が浮気していることに嫌悪感を覚えためぐるの気持ちを虹は共感できると思う。めぐるも愛すべき家族が気持ち悪いことをやっているのを目にしたわけだから。
私のれむとか言ってすごくド厚かましかったな…虹…れむはまだ誰のものでもないだろ。小麦に気持ちが揺らいでいるけど。
最後に
『僕らのアイは気持ち悪い』2巻は個々の好き・気持ち悪さや小麦とれむが確実に距離を縮めているところなど、見どころが盛りだくさんだった。めぐるの複雑な感情や虹の思い描く解釈と見るところが本当に多い。
小麦達の気持ちに立って、物語を読み進めていくことを意識した。傍から見ると、気持ち悪いと思うかもしれない行為や考えも、別の角度から見ると共感することができなくも。
気持ち悪さを題材にした作品といえば、まんがタイムきららで連載されていた『きもちわるいから君がすき』を思い出すな。
自分が正しい・これは気持ち悪いといった解釈は、客観的に見るとマイノリティなのかもしれないと疑うことも時には必要な気も。自分が正しい・間違っていないだけで突き進むのはすごく危険だと感じるようになった。
話自体はおもしろいので、まだ読んでいない方は『僕らのアイは気持ち悪い』をぜひぜひ。すでに読んでいる方がいる場合、物語をより深く楽しんだり、理解するきっかけになったりすれば幸い。
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